「わかった気」では終わらせない本

ある日、父から「そちらに本を送った」と連絡が来た。

 

 

 

おすすめの本を教えてもらうことは多々あれど、わざわざ送ってくることなど稀である。それも、「すぐ読め」とのこと。

 

 

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ファザコン、もとい父を尊敬している私がここまで熱弁されて読まないわけがない。早速届いてすぐに読み始めた。それが『現代経済学の直観的方法』(長沼伸一郎)であった。

 

 

 

 

結論から言う。

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ面白い

 

 

 

 

 

 

 

ただし、今まで経済学をほとんど勉強してこなかったわたしの感想であることは踏まえて欲しい。どのくらいの知識レベルだったかといえば、「金利ってナンデスカ」このくらい。

 

 

 

実際この本は「経済学の知識はまるでないが読書レベルの高い」人間を対象としているらしい(前書きより)。読書レベルが高いかはさておき、習慣的に読書をしていてかつ経済学赤ちゃんの私にはまさにお誂え向きの本であると言える。

 

 

 

 

内容についてだが、金利の説明から始まり、ケインズ経済学や貿易の基本についての説明、さらには仮想通貨とはなんたるかまで広く触れられている。資本主義経済の概略を掴むのに良い構成と流れだと思う。第1章で苦戦しまくった「プロ倫」の話が出てきたときはこっちを先に読むべきだった…と後悔したものである。

 

 

 

 

 

 

さて、構成もいいがやはりこの本の良さは読みやすさにある。

 

 

 

 

 

 

「え、これってどういうこと?」と疑問が浮かんだ次の瞬間に具体例で噛み砕いて説明してくれるし、「これってこんな問題起きるんじゃないの?」と考え始めた次の行には別側面からのアプローチが始まっている。痒いところに手が届く、の連発なのである。

 

 

 

 

 

また、今まで自分の中では単語でしかなかった言葉に意味が伴うようになった。

 

 

 

 

 

 

個人的に中学受験経験者が陥りがちな問題として、単語を頭にインプットすることに躍起になるあまり意味を後回しにしてしまう点が挙げられると感じる。

 

 

 

 

 

 

中学受験界隈では小学4年生のあたりから単語の詰め込み教育が行われ、「小村寿太郎関税自主権の撤廃に成功!」「富岡製糸場を建設!」ぶっちゃけ文字列さえ覚えたら点数が取れる。でも本人がそれで満足したら知識がそこで止まっちゃう。さらに悪いことに私はこの傾向が大学受験に至るまで続いてしまった自覚がある。

 

 

 

 

 

 

今更ながら自分が大学受験に失敗したのはこの問題が無視できないくらい大きかったからではないかとさえ思う。

 

 

 

 

 

 

その点この本では前述の関税自主権の問題や富岡製糸場を建設した経済的意義、世界史でなんとなく覚えていたブロック経済保護貿易の関係もこれ以上わかりやすく説明することは不可能なのでは?と感じるほどに分かりやすく説いてくれる。脳の深いところまで知識が浸透していくような気がする。つまりは「すんごい理解できた」状態に簡単になれるのだ。

 

 

 

 

ほんでさ、この手のわかりやすい本って読んだだけで自分があたかも全知全能の神にでもなったかのような気になってそこで手を止めちゃうことが多いの。

 

 

 

 

しかし!この本は違う。最終章にちゃんとゆとりを持たせてる。

 

 

 

 

 

最終第7章では「資本主義はどこに向かうのか」と題して、縮退傾向にある資本主義経済を考察しているのだが、数学や物理学が絡んでくるのが面白い。やっぱりさ、色々な分野を学ぶとそれだけ視野が広がるってもんよね。中高の時もっと真面目に理系科目と向き合っておくべきだった。未来が大きく変わっていたかもしれない。

 

 

 

この本と出会うのがもう少しはやければと考えずにはいられなかった。出版されたの最近だけど。

 

 

 

 

とにもかくにも、これからもっと学びを深めていきたいと思える学問が一つ(なんなら複数)見つかったというだけでも大きな価値を見出せた本だった。個人的には学習レベルの高い小学6年生〜経済にある程度精通した大人まで幅広く楽しめる本である気がする。

    

 

 

それにしてもさあ読みたい本の数に読了スピードが全然追いつかん。生涯積読よ。

 

 

 

現代経済学の直観的方法

現代経済学の直観的方法